避妊手術について
小さな穴で正確安全
腹腔鏡の手術について
従来の方法とはお腹をメスで切開して子宮卵巣につながる血管を糸で縫合し、卵巣または卵巣子宮を摘出し、その後糸でお腹を縫合する方法です。腹腔鏡手術はお腹に小さな穴を開け、そこからトロッカーとよばれる筒状のものを入れます。その小さな穴からカメラや血管をシールする機械を入れていきます。写真のように鮮明な画像をみながら血管の位置を確認して正確に、かつ安全に手術をしていきます。
特徴
- 01とても小さな傷で手術可能（約5㎜の傷が2－3つ）
- 02そのため体内の炎症や傷の痛みを最小限に抑えられる
- 03日帰り手術が可能
- 04カメラによる鮮明な画像が得られ臓器の異常や血管の目視が可能
- 05出血の有無、確実な卵巣の摘出の確認が正確に行える
◎飼い主様のご希望があれば手術の動画もみれます。
- 内容によっては手術時間が延長することもある
- 視野の確保による炭酸ガス気腹処置により血液循環が影響を受ける
- 状況によっては開腹手術へ切り替えることがある（安全面の考慮、ヘルニアなどの先天性奇形の存在など）
その他の手術について
潜在精巣摘出
潜在精巣とは睾丸が両方もしくは片方が正常の陰嚢の中に
入ってこれず腹腔内もしくは皮下に存在してしまう病態のことです。
潜在精巣においては正常の精巣に比べて腫瘍化するリスクが高くなります。
そのため潜在精巣においては手術が推奨となります。
開腹の場合はお腹の中から小さい精巣を見つけ出すために視野を確保する必要があり、その為には傷口を大きくしなければなりません。その結果本人への負担は大きくなります。
しかし、腹腔鏡を用いると、小さい傷口でお腹の中全体を見渡せますので、本人への負担は少なく、確実に手術を行うことが可能です。
術後の出血の確認も目視でしっかりと行うことができます。
術後の傷跡
腹内に存在している精巣
腹腔鏡下肝生検
大きさ5㎜のトロッカーという筒を2－3か所設置し、
肝臓を探索しながら複数の肝葉から組織片を採取します。
特徴としては超音波検査やCT検査などの画像検査においても確定診断がつきにくい肝疾患に対して低侵襲で生検をすることができます。また腹腔鏡のカメラを用いて肝臓全体の病態の確認ができます。また開腹に比べて傷がとても小さく痛み少なくできます。
鉗子を入れて肝臓を一部を採取
膀胱結石摘出術
犬や猫は食事の影響などにより膀胱内に結石ができしまうことがあります。膀胱の結石は炎症を引きおこし、膀胱炎症状をあらわす可能性があります。
また、雄犬では尿道が狭くて長い為に、結石が尿道に詰まり排尿ができなくなってしまうこともあります。そのため膀胱結石を持っている症例は外科的摘出が必要となります。
一般的にこの病気における開腹下の手術では、お腹を開け、膀胱を切開し、結石を取り除きます。しかし、この開腹下の場合結石すべて取り除くことは難しく、1-2mmくらいの結石は取り残すリスクがあります。
当院では一般的に行われている腹部切開による方法に加え、お腹に一か所小さな切開を加え、そこから腹腔鏡を用いての摘出も行っております。
結石を取り除く手術を腹腔鏡下で行うことにより、肉眼では見えにくい膀胱の中を鮮明に観察しながら手術を行うことができます。また膀胱粘膜を傷つけずに行うこともでき、膀胱や尿道の結石の取り残しを極めて少なくすることができます。
術後の傷跡
膀胱内の結石
予防的胃固定
大型犬種に対して起こり得る胃拡張・胃捻転症候群の予防のため
に行う手術です。
胃捻転症候群とは？
胸の深い大型犬種に起こりやすい致命的な病気です。
何らかの原因で胃が拡張し、捻れを起こし自ら戻れなくなった状態による病気です。血液循環の悪化によるショック症状や到死的な不整脈、胃の壊死や脾臓の捻転壊死を起こします。
もしこの病気が疑われた際の治療法は外科的な整復および固定のみです。
胃捻転を起こしやすい犬種
グレート・デン
秋田犬
スタンダード・プードル
ラブラドール・レトリバー
ゴールデン・レトリーバー
アイリッシュ・セッター
ワイマラナー
ドーベルマン
バーニーズ・マウンテン・ドッグ
当院では胃捻転を予防するために、胃を腹壁に縫い付けて固定する手術、予防的胃固定術を行っております。これまで予防的な胃固定術はお腹を大きく開ける開腹手術で行われていましたが、腹腔鏡を用いることで、小さな傷口且つ低侵襲に胃固定術を行うことができます。また上記の大型犬においては胃捻転を予防するために、避妊手術や去勢手術のときに、一緒に予防的な胃固定手術を受けられることをお勧めしています。
腹壁に胃を固定している
その他の適応疾患
副腎腫瘍摘出 / 門脈体循環シャント / 乳び胸 / 胆嚢摘出 など