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症例紹介

乳び胸の手術を腹腔鏡下で行った犬の1例

乳び胸とは?

犬の乳び胸(にゅうびきょう)とは、胸腔内に乳び(リンパ液と脂肪を含む白っぽい液体)が異常に溜まる疾患のことです。これは、胸管と呼ばれるリンパ液の通り道が損傷したり、異常な圧力がかかったりすることで、リンパ液が胸腔内に漏れ出すことで発生します。乳び胸はさまざまな原因で発生しますが、特発性(原因不明)の場合も多くあります。柴犬が好発犬種とされています。

乳び胸の症状は、胸腔内に液体が溜まることで呼吸困難を引き起こします。主な症状は以下の通りです。

  • 1呼吸が荒い、浅い(努力性呼吸)
  • 2咳が続く
  • 3運動を嫌がる、すぐに疲れる
  • 4食欲不振、体重減少
  • 5重症の場合、チアノーゼ(舌や粘膜が青紫になる)

診断方法とは?

獣医師は以下の方法で診断を行います。

  1. X線(レントゲン)検査
     ・胸腔内の液体貯留を確認。
  2. 超音波検査(エコー)
     ・胸腔内の液体の性状を評価。
  3. 胸水(乳び液)の採取・分析
     ・針を刺して液体を採取し、白濁しているか、脂肪の成分(トリグリセリド値)を調べる。
  4. CT検査
     ・原因となる腫瘍や胸管の異常を精密に評価する場合に実施。

手術方法

当院にて行った乳び胸の手術内容です。

手術:胸管結紮術及び心膜切除術
胸腔鏡にて右側よりアプローチを実施

胸腔内の画像。白い液体が貯留した乳び。

大動脈周囲にあるリンパ管にアプローチするために、近傍より剥離を開始している。

画像を横に走る構造が大動脈

奇静脈を除いた後縦隔領域を右→左に貫通させたen bloc胸管結紮術を行なった。

黒いものが結紮糸で破綻したリンパ管の流れを止めている。

術後の経過

呼吸状態も安定し、幸いにも術後2日目には乳びの貯留はなくなりました。今回は通常の開腹手術よりも傷が小さく、さらに手術を低侵襲に行うことができたため術後の回復もとても早かったです。5mmのきずが左右合わせて5箇所で手術を終えています。